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    「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」

    「あゝ、さうか。あゝ、さうか」

    「それでは、又あらためて伺ひます」

    房一は傷を調べにかゝつた。後頭部にもあつた。身体にへばりついたシャツをはぎとると、背部に最もひどい傷があつた、それは紛まがふところのない刃物による刺傷だつた。新しい血がはぎとられたシャツの下から、瞬またゝく間にふき出し、滴したゝり落ちた。

    「馬子まごにも衣裳つて云ふから――」と云つたほどである。

    「畜生、おぼえていろ。」

    私は時間を忘れているが、ひょッとすると、一二分、又、一二分というように、ねむっているのかも知れない。頭のシンが疲れている時には、頭をシャボンの泡だらけにして、湯につかりながら、後頭部からコメカミへかけて十分も十五分も静かにもむこともある。両耳を抑えて、湯の中へ頭をもぐしこんでシャボンを落して、又、湯の温度に同化してしまう。

    鬼倉は低い声で、はじめてぢつと相手を見た。が、それつきりだつた。動きもしない。徳次は何故ともなく一寸ひるんだ。が、又、

    「さう、知つてる、知つてる」

    「いや、そこまで確かなことにはしませんでしたが」

    房一の顔は重々しい沈思の表情と太い興奮の色とで紅黒く、やはり膏汗が漲つていた。

    道平はゆつくりと首を動かして訊いた。

    房一はまだ考へ深さうにしていた。

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