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    練吉と房一は、川沿ひの路を、肩を並べて自転車を走らせていた。

    相手が急に三人にふえたためか、柵の中の長身な男は一層興奮した。

    「何でもいゝから早くしてくれ。路をまちがへて大廻りしちやつたんだ」

    と、加藤巡査はくり返した。

    「よく来て下さいましたな。何しろ不便なところですから、途中が大変だつたでせう」

    「はあ、それは――」

    「ですが、一体財産譲渡つて云ふのはいつのことなんです、大分前ぢやないですか」

    いくらか浮うはつ調子に口の軽くなつた小谷にひきかへ、今夜の練吉は何となく元気がなかつた。細かいながらに絣かすりの目のはつきりした大島の上下揃ひを稍ぞんざいに着こみ、吃り気味に話をする彼には、だらりとした様子と同時に、どこか家風の結果といふやうな一脈の潔癖さが混交していた。

    房一は目を輝かせて云つた。

    温泉の浴場は溪ぎわから厚い石とセメントの壁で高く囲まれていた。これは豪雨のときに氾濫する虞おそれの多い溪の水からこの温泉を守る防壁で、片側はその壁、片側は崖の壁で、その上に人々が衣服を脱いだり一服したりする三十畳敷くらいの木造建築がとりつけてあった。そしてこれが村の人達の共同の所有になっているセコノタキ温泉なのだった。

    小谷は房一に話しかけた。

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