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並んで立つと、いきなり
と、練吉は房一の方をふりむいた。
「捕虜が内地へ送られるさうだよ」
すると、間もなく診察室の方から急ぎ足で出て来た房一は、道平を見るなり、
「もはやお膳も据ゑていたゞきましたし、これで十分頂戴いたしたも同然でありますから、甚だ失礼ながらお先きに御免を蒙ります」
「ねえ!」
「それあ、しかし、何だな、知吉さんも今まで不服だつたのをこらへていたんだな、何分かの理窟はあるわけだね」
「そんなことができるもんかねえ」
と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。
「さうだつてねえ」
「永いこつてすよ」――そのきつぱりとし、そのためにかへつて本当の永さを、あのつきることのない、何かしらにみちた前方の日々を現しているその云ひ方が、ひどく房一の頭に残つていた。
若しもこの時誰かが、この男、徳次に向つて君はこの奥さんの幼い時に抱いたり負んぶしたりしたことがあるのかねとからかひ半分に訊いたら、彼は本気になつて考へこみ、何かしらそんなことがあつたやうに思ひ出し、信じこんだかもしれない。何しろ彼は房一とあんなに親しかつたのだ。盛子はその房一の奥さんだつた。してみれば、やはり古い以前から知つているも同然ではないだらうか。抱きかゝへてあやしたこと位あるかもしれない。
と、盛子が傍から又さつきのをかしさを思ひ出したらしく、そつと注意した。