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庄谷はほんのしるしだけにちよつと頭を動かしたが、やつと相手が誰だか思ひ出したらしく、その細い眼が急に徴笑した。
「いや、あれは私が勝手に頼んで来てもらつたんですからな、御心配はいりませんよ」
「知吉さんはこれまで散々踏みつけられて来たんだから、自分が戸主になつてみるとこれまでの腹いせといふ気もあるんでせうな」
房一は面喰つて、ぽかんと口を開けた。
そして、これと全く同じ活気が、あの燃え残りの蝋燭の発する佗びしい、だが、ゆらめくやうな活気が今夜の法事で主人役をつとめている神原直造にもあつた。
と、徳次は足を踏ん張つたまゝ今泉に云ひかけた。こんなに彼の方から話しかけるなんてことは滅多になかつたので、よほど虫のいどころがよかつたのだらうが、それでもいつものあの愚弄するやうな色は争はれなかつた。
と、彼は恐しく手まどつて答へた。
「せんせいですか」
「おい、今高間君が来ていたんだよ」
「その首はどんな顔をしていた」と、友達のひとりが訊いた。
それから、房一は歩きながら漠然とした沈思に落ちた。